泣き声がきこえる。
クハブスの泣き声。
クハブスはよく泣く、彼のお兄さんの小さな肖像画を見て。
「クハブス…」
「兄さん…」
そんな時の彼は僕とお兄さんの見分けがついてないみたい。
「いい子にしてた?」
「はい」
「毎日歯をみがいて、好き嫌いせずに食べ物を食べて、人に親切にしてるかい?」
「はい…」
「好きなものだけ食べていては丈夫になれないよ、好物以外のものもきちんと食べなさいね。」
「はい」
僕はそんな時は少しだけ、彼のお兄さんの真似をする。
こうすればもっと彼が僕の事を必要としてくれそうな気がするからだ。
僕の膝の上に頭を乗せ、肩を震わせ泣くクハブスの黒髪をそっと撫でる。
さらさらしてる…
絶対にリンスはかかさないもんね、クハブス。
クハブスはこういう時、いつも泣きつかれてそのうち寝てしまう
そして眼を覚ますと何も覚えていないんだ。
本当は僕自身の事を思って泣いて欲しいけど…、クハブスは僕自身の事、きっと見たことがないもんね。
でもこのままずっと僕を必要としてくれて僕をいっしょにいさせてくれてるなら、
僕は僕である事をあきらめて…、
ううん
僕なんて最初からいなかった事にして彼のお兄さんになってもいいって思うんだ。
そして今日の僕は膝の上で寝息を立て始めた彼の頭を抱いて眠る。
おやすみ、クハブス、また明日…。
2010年3月6日土曜日
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