2010年1月24日日曜日

ハンカチを落とした話【ロールプレイ練習SS】

前提
 ・ハーポクラテスとクハブスは揃いのハンカチを持っている
 ・そのハンカチは出会って間もないころに買ったものである
 ・ハーポクラテスだけがそれを落とした

それはある風の強い日の事だった。
僕はクハブスと昔お揃いで買ったハンカチで彼の頬についてしまった汚れを拭おうとしていた。

そしたら、風がハンカチを僕の手から奪っていって近くの泉の水面に落としたんだ。

「あっ…」

ただの古いハンカチだったけど、それは僕にとって大切なものだった。
初めてクハブスと一緒に買い物に行ったときお揃いで買ったものだから、あのハンカチは大切に使いたい。

僕はそう思ってたから、そのハンカチを取りにいこうとしたんだ。
するとクハブスが僕の腕を掴んで

「…何をしようというのですか?」

そう聞いてきた

「……ハンカチを…。」って僕が答えると

「新しいのを買えばいいでしょう。」と彼は言った。

…そうなのかな?
…そうなのかも…。

でも、僕は新しいハンカチよりそのハンカチがどうしてもいいもののような気がして
「でも…僕はあのハンカチがいいよ…。」って言ってみた。

「駄目です。」
「そんなにハンカチが欲しいのであれば僕と新しいのを今から買いに行きましょう。」
「ハーポにピッタリなものを選びましょう、どうだっていいじゃないですか、あんな古いくて汚いハンカチ。」
そういってクハブスが僕の腕をひっぱる。
シルクの手袋が皮膚に擦れて痛い…。

「……わかったよ、痛いから離して…。」
僕がそういうとクハブスはなぜかちょっと安心したような顔をして僕の腕から手を放した。
「じゃあ、いきましょうか。」

そう彼が言う横ですっかり水を含んだ含んだハンカチが
ゆっくりと泉の底に沈んでいく姿が見える。

『いいや、今からどうせ新しいハンカチが手に入るんだから、あんな古いハンカチは沈んじゃっても…。』

そう考え直して僕はクハブスと同じ方向を向く。
でも、そのときふと、僕はこれが僕達にとってとても悲しい出来事のような気がした。




「僕のパートナーがハンカチを追いかけて深い泉の中に入ろうとしましてね。」

「とても驚きましたよ…。」

「しかしあのハンカチはとても大切なものだったような気がします。」

「まあいい、あんな事はさっさと忘れてしまいましょう。」

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